心臓とは、ポンプのように収縮を繰り返し
全身に血液を送り出す臓器で、
生命を維持するためにとても重要です

動物も高齢化に伴い、心臓疾患も増加しています。
心臓病の罹患率は、犬において9歳以上では14.4%と非常に高い値を示しています。また猫においてはどの年齢でも発症する可能性があり、10歳での罹患率は、1.7%と報告されています。

心臓に影響を及ぼす病気を治療するためには、その形態や機能を測定することが重要であり、病気の状態を正確に把握し、治療方針を決定する上でとても重要です。
早期に異常を見つける事により、治療ができる病気はたくさんあります。

循環器系疾患の主な検査(診療の流れ)

心臓検査は基本予約制になります。(緊急の場合はその限りではありません)

1.問診検査

心臓による症状が出ていないか伺います。

2.身体検査

体重、体温および触診などによる一般的なチェックに加え、聴診による心拍数や心臓の雑音の程度を判断します。

3.各種検査

正確な診断に必要な検査の提案をさせていただきます。
検査は動物の状態により、以下の検査を組み合わせます。

  • ・血液検査(血球計算、血液生化学検査、NT-proBNT)
  • ・血圧測定
  • ・心電図検査
  • ・胸部レントゲン検査
  • ・心臓超音波検査

4.診断

検査結果に基づき診断し、治療方針を決定します。

治療を行うには、病気の状態を正しく知ることが重要です。
多くの心臓病は心音に雑音が認めらますが、病気によっては聞こえないこともあります。
そのため、心臓の病気の発見には定期的な健康診断を受けることをお勧めします。

よくみる循環器疾患

僧帽弁閉鎖不全

犬の後天的な心臓病で一番多く、左心房と左心室を仕切っている僧帽弁に異常が生じ、左心室から左心房へ血液が逆流するようになります。逆流が増えると心臓内で血液が鬱血し、心臓が大きくなってきます。しばらくは、代償的に心機能を上げることで、全身の循環を維持します。しかし、心拡大が進行すると、代償機能が破綻し左房に鬱滞した血液が、肺に滲み出ることにより肺水腫になります。肺水腫になると、呼吸が苦しくなるため素早い治療が必要になります。

<好発犬種>

小型犬~中型犬多く見られます。(チワワ、マルチーズ、ヨークシャーテテリア、シーズー、キャバリア etc.)
10歳で6頭に1頭、小型犬においては3頭に1頭は罹患するとも言われています。

<症状>

僧帽弁閉鎖不全の初期の場合、症状が認められないことも多く、動物病院に来院されたときに聴診で見つかることも珍しくありません。症状が進むと、疲れやすくなるため、遊ぶ時間や散歩の距離が短くなることがあります。さらに進行すると、運動したり興奮したりした後に、舌の色が悪くなることがあります(チアノーゼ)。また咳が認められることもあります。心不全に進行すると、呼吸状態が悪く、息苦しいためにうつ伏せになることができず、ずっと座ったまま肩で息をするようになります。また動物によっては、失神が起こったり、お腹に水がたまりお腹が張ってきたりすることもあります。

<病期>

アメリカの獣医内科学会が病期を以下のように分類しています。

<治療>

病期によって治療内容を決定します。

ACVIM STAGE
A B1 B2 C D
食事療法
ACE阻害薬
Bブロッカー
ヒモペンダン
フロセミド/トラセミド ×
スピロノラクトン
ジルチアゼム ×
ジゴキシン ×
シルデナフィル × ×

◎:強く推奨◎:中等度に推奨●:弱い推奨△:多くの場合すべきではない×:禁忌

同じ病期だとしても、個々の動物によって状態は様々なので実際の治療はもう少し複雑です。臨床徴候、検査結果を組み合わせて総合的に判断します。


VD像

LAT像(VHS10.0v)

正常な犬のレントゲン画像


VD像

LAT像(VHS12.0v)

僧帽弁閉鎖不全による肺水腫を起こした犬のレントゲン画像
心臓が大きく拡大し、肺の一部が不透過性を示し肺水腫が疑われる所見を認めます。

僧帽弁閉鎖不全の犬の胸部超音波所見
左心室が拡大し、僧帽弁前尖の粘膜変性および逸脱、逆流を認めます

肥大型心筋症

猫において一般的な心疾患で、ポンプの役割をしている左心室において心筋壁が肥大して心機能障害を起こすことにより心不全になる。また血液の停滞により、動脈血栓塞栓症を併発することもあります。また、大動脈への流出路の障害や不整脈が病態を悪化させることもあります。

<好発猫種>

遺伝性とされており、メインクーン、ラグドール、アメリカンショートヘアで遺伝の関与が疑われています。また健康な猫でも14.7%で肥大型心筋症と診断された報告もあります。どの年齢でも発症する可能性があり、雄に多いとされています。

<症状>

肥大型心筋症の猫の多くは無徴候です。臨床徴候もなく、なんとなく元気がないという不定愁訴でみつかることもあります。初めての徴候が血栓症や心不全、突然死ということも珍しくありません。

<治療>

無徴候の猫に関しては、まだ決まった治療法はありません。心不全に場合は、心不全の治療に準じたものを行います。慢性経過においては、βブロッカーやカルシウムチャネル拮抗薬等を用いることが多いです。また血栓症の心配がある場合は、抗血小板薬を使用します。

肥大型心筋症の猫のレントゲン画像
心陰影の拡大し、左心房が大きく拡張しています


肥大型心筋症の猫の超音波検査所見(左心室短軸像 Mモード)
左心室の心室壁が肥厚しています

血栓塞栓症を起こした猫の超音波所見
腹部大動脈内に血栓と思われる血流の阻害が認められます(矢印)

当院の院長は、循環器の研究により博士号を取得し、日本獣医循環器認定医として循環器医療の分野に力を入れております。
また、鳥取大学日笠喜朗名誉教授の協力を仰ぎ、循環器医療の分野に力を入れています。犬・猫の循環器病の研鑽を積んだ獣医師が最新の医療知識と技術に取り入れながら治療にあたります。

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